八木 ひでこ

栃木県大田原市議会議員 八木 英子(やぎ ひでこ)


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謹んで災害のお見舞いをもうしあげます

 

平成23年6月10日の栃木県大田原市議会定例会においての私の一般質問に関することを取り急ぎまとめました。足りない部分はまた追記します。

通常は市の答弁に対して2度3度と質問をしていき深く掘り下げていくのですが、30分という限られた議員の持ち時間の中で、また前日に質問された議員への市の答弁内容から市のスタンスを考慮し、今回はみなさまからいただいた大切なご意見も含め、できるだけ市当局に対してメッセージを伝えきることを優先しました。

その結果満足のいく回答を導き出すには遠く及びませんでしたので、物足りなかったと感じる方も多くいらっしゃると思います。私自身も、もっと時間を有効に使い、市の答弁に対して更に問題を深く掘り下げたかったと議員としての力不足を反省しています。本当に申し訳ありません。
しかし、まだまだ議員として出来ることを模索し、行動していきます。

【平成23年6月18日追記: 昨日議会最終日において、大田原市でも放射線測定器を導入する旨の追加議案があり、無事可決し補正予算が充てられることとなりました。大田原市内の全小中学校・幼稚園・保育園に放射線測定器を配布し継続的に測定を実施し、その他の教育機関等は貸付での対応です。(平成23年6/17)

また、大田原市が全ての小中学校・幼稚園・保育園の校庭、園庭の表土除去の対策をすることとなりました。津久井市長の英断に敬意を表します。(平成23年6/18) 

大田原市もようやく本格的に子どもの被曝対策に乗り出しました。私も活動してきたかいがあります!プールの問題、給食の問題等まだまだ必要な対策は山積していますから、今後も提言をつづけていく所存です。みなさんもご意見がありましたら、どしどしお寄せください。】

平成23年6月15日
八木ひでこ


※一般質問の原稿はこちらです。
http://hideko.yze.jp/gikai2.htm

大田原市議会 6月議会 一般質問(6月10日)の報告

今回の私の一般質問における大きな論点は、

「今回の放射線問題は、その限度に関する専門家の意見がまちまちであり、誰も実証データを持っておらず、5年10年20年と時が経ってみなければ安全か否かの真偽が明らかにならない。つまり子どもを実験台にして将来的に健康被害が出るかどうかの賭けをするということ。

将来、あの時にこうしておけばよかったと後悔するよりも、子どもの未来を守るために今すぐ出来ることはたくさんあるのだから、市としてもできる限りの対策をするべきだ。

たとえそれが取り越し苦労だったとしても、あの時は大変だったねと笑えた方がいい」

というものです。

私は質問の冒頭で、「国や県に責任転嫁をするのではなく、仮に市が国の方針を追随するとしても、自立した地方自治体として、きちんと検証検討し、その最高責任者である市長としての責任により決定した答弁をいただきたい」と申し述べました。

ですから、今回いただいた回答に対して、津久井富雄市長はじめ、新江侃教育長、その他答弁をした大田原市当局の方々は、将来的にも責任を持つという意思があるということです。

私の一般質問の前日に、他の議員の質問で「市で放射線の測定を行う予定はないのか」というものがありましたが、津久井市長は答弁の中で「国際原子力機関、IAEAの基準である年間20から100ミリシーベルトの中で一番低い値を批准している文部科学省の基準である年間20ミリシーベルト(毎時3.8マイクロシーベルト)より大田原市の放射線量は低いので安全だ」と間違ったリファレンスを引いておられました。

回答をする上での前提条件が間違っているため、このような回答を導いてしまったのかと思い、指摘をした上でもう一度質問をさせていただきましたが、回答は変わりませんでした。

確かに文部科学省は、子どもの被曝の基準は「20ミリシーベルト年」という暫定的考え方を発表していますが、文科省が批准したのは津久井市長の言う国際原子力機関・IAEAではなく国際放射線防護委員会・ICRPの勧告です。

また「20から100ミリシーベルトで一番低い値」と言うのも同勧告の第五項、「緊急時に汚染区域に居住する場合の一時的な期間の限度基準値」であり、政府が福島県の避難区域を設定する上で参考にした値で、子どもの被曝量の根拠ではありません。

そもそも政府が子どもの被曝量の根拠としたのはICRPの勧告の第六項であり、それも元々は、ICRPバブリケーション111の第48から第50項が元になっています。

その原文によると、放射線汚染地域を放棄せず住民に住み続けることを許容する場合、「年1から20ミリシーベルトの範囲」で、住民の保護を最大限に考慮して可能な限り低い値を設定し、長期的には年1ミリシーベルトに近づける努力をするべきであるとしています。

しかし文科省は、「年1から20ミリの範囲」だけを強調し、その中で「一番高い値」を設定しています。また、ICRPの勧告の原文の中のどこを探しても「20ミリシーベルト」ならば安全であるとは一言も述べられていません。

この20ミリシーベルトという文科省の暫定基準について、内閣官房参与であった放射線専門家の東京大学大学院教授の小佐古氏は「政府の対策は法にのっとっておらず、場当たり的だ」と批判して辞任することにより反意を示し、原子力安全委員会も「20ミリシーベルトを許容していない」と断言しています。

また社団法人日本医師会も「とくに小児については、可能な限り放射線被曝量を減らすことに最大限の努力をすることが国の責務である」として20ミリシーベルトを強く否定しています。

社団法人日本医師会も「とくに小児については、可能な限り放射線被曝量を減らすことに最大限の努力をすることが国の責務である」として20ミリシーベルトを強く否定しているのは、一般質問でも述べたとおりです。

内部被曝に関しても、厚労省は、公開質問の場で、「計算によると暫定基準値のレベルの放射能に汚染された水・食品を1年間食べた場合の被曝量は年間17ミリシーベルトの被曝になる」とした上で、「水・食品の放射性物質汚染について現行基準レベルの放射能含有食品・水を消費した場合、後になって健康影響が出るかもしれない」との発言をしているという点も、私の一般質問で述べさせていただきました。

多くの政府関係者や関係機関が責任を取れない、また責任の所在をぼかす発言をする中、津久井富雄市長も新江侃教育長も、自立した地方自治体として大田原市は責任を持って検証検討した結果として国の定めた基準値(正確には国の内部でも意見が割れていますから、民主党管内閣の定めた基準値になるのでしょうか)を安全である、支持すると答弁されました。

市政の全てを司る津久井富雄市長と、市の教育全般を司る新江侃教育長が、その責任において答弁をし、自分が責任をとると責任の所在をはっきりさせたという点においては、評価すべきだと考えます。

しかし、答弁の内容自体にはがっかりさせられたのも事実です。私の質問意図をはぐらかしたかのような答弁に終始していました。

結論としての現在の大田原市の方針は、市の放射線量は基準値以下なので安全である。
よって市として放射線の計測をする理由も除染等の対策をする理由もない。
給食で使う食材も基準値以下なのだから、どんどん食べて問題ない。
水も汚染されていないので、屋外プールの使用も問題ないし、継続的な検査や対策も必要ない。
とのことでした。

子を持つ親は、現在の放射線の基準値では安心できないから、声をあげているのです。

これは、元々の基準値がどのような観点から作られ、また、どのような観点から基準値が引き上げられたのかを推察すればわかるはずです。

本来基準値は、国民(特に子ども)の健康を第一に考え、必要以上の安全マージンを取り、子を持つ親の大多数から見ても厳しすぎると感じるくらいに設定されて丁度いいと私は考えます。

おそらくそのような観点から定められたのが、自然放射線被曝と医療被曝を除き、外部被曝と内部被曝を含めて年間1ミリシーベルトという世界基準だったのでしょう。

そして日本もこの基準を批准していました。しかし、新しい基準値は、出来る限り子どもの健康被害少なくするという観点ではなく、補償の範囲を出来る限り少なくするためは、最大限どれだけの被曝を子どもに許容させるかという観点からつくられたように感じます。

英語には”possible”と”probable”という単語があります。
どちらも日本語で言うと”可能”ですが、ニュアンスに違いがあります。
夏目漱石は、英語の授業でそのニュアンスを「私が教壇で逆立ちするのは”possible”だが、”probable”.ではないよ」と教えたそうです。

子を持つ親は、全てにおいて生活環境や条件(人間関係、仕事の問題、金銭的な問題、育児、教育等)と放射線の安全対策(子どもの健康を守る手段)の非常に難しく繊細な、方法論的に“possible”なことと、現実的に“probable”なことのバランスを、日々悩みながら判断して子育てをしなければならないというストレスにさらされています。

方法論的に“possible”な安全対策の中で、現実的に“probable”なものは、それぞれの生活条件の中で限られてくるからです。

できるのにしてあげられない。
できるけどしたくない。
できるけどやらせたくない。
ストレスを感じないはずがありません。

例えば親が子どもを放射線被曝から守るために個人レベルで行える100%安全側に立った“possible”な対策は、今までの大田原市での生活を全て捨てて安全なところに疎開することです。実際に大田原から他の安全な地域に引っ越した方もいると聞いています。しかし、方法論的に“possible”であっても、全ての家庭において現実的に“probable”か?というと、そうではありません。

その他、学校は休ませ子どもは家から出さない、一日中窓は締め切る、高性能なマスクを室内でも一日中付けさせる等々、方法論的に“possible”であっても、現実的には“probable”とは限らない対策がたくさんあります。

もっと現実的な対策でも、
「基本的に地産地消の給食が心配だからお弁当を持たせたいけれど…」
「校庭で活動させるのは心配だけれど…」
「屋外のプールに入らせるのは心配だけれど…」
「登下校でマスクをつけさせたいけれど…」

しかし、
「本来それぞれの年齢において、子どもに学ばせてあげたいことや、活動させてあげたいことを制限するのも…」
「他の子がやっていないのに、自分の子どもだけは被曝させたくないという対策をとるのも…」
子を持つ親のそんな切実な声が私に届いています。

国の財政は以前から厳しい状態にありました。そこへ今回の震災被害。財政面を考慮した対応を取らざるを得ないのはわかります。大田原市の財政も決して余裕があるわけではありません。
だからと言って、日本の未来を担う子どもたちの健康をないがしろにして良いはずはありません。

私は、本来の日本の法律で定められた1ミリシーベルトという基準を超えたからといって、危険だから市民に退避命令を出して全員集団疎開させろとは言いません。ただ、1ミリシーベルトの基準に少しでも近づけるために、市としてできる限りの実現可能な“probable”な対策をしましょうと言っているのです。

私が今回の一般質問で申し上げた対応対策にはどれくらいの予算が必要なのでしょうか?

以前このホームページでも紹介しましたが、大田原市内の私立の幼稚園であるなでしこ幼稚園では、子どもの被曝は少なければ少ないほど良いという信念で独自に園庭の表土を除去し、実際に放射線量が低減したのが確認されています。民間の一私立幼稚園ですから、予算を捻出するのに苦労されたと思います。それでも、民間の予算で出来るレベルの対策なのです。

市の税金の使い道として、子どもの被曝対策に充てることに反対する市民はいないと私は信じています。
また、どうしても市で予算が捻出できないなら、今後東京電力の補償ないし国の補助を要請していく(これは予算があっても要請するべきですが)とし、一時的にPTAに協力をお願いしたり、個人や法人に寄付金を募ったりもできるはずです。

私が最初に教育機関の放射線量の計測と除染を新江侃教育長に提言させていただいた時に、直ぐ対策をとっていれば、ゴールデンウイーク中に完了させることが可能だったかも知れません。そうすることで、生徒たちが屋外活動(既に開催されてしまった運動会等)で砂埃等から吸い込む放射性物質を低減させ、将来の健康被害へのリスクを減らすことができたはずです。また、保護者の不安やストレスも少しは低減させることができたのではないでしょうか。

屋外プールの対応もそうです。全ての学校のプールを屋内プールに作り変えろとは言っていません。
もちろんそう出来るならそれにこしたことはないですが現実的には難しいことでしょう。出来たとしても直ぐにというわけにはいきません。

大田原市の水道水が放射能に汚染されていないとしても、時間が経つにつれ雨や埃等でどの程度プールの水が放射能に汚染されて行くのか分からない、というのが一番の不安材料なのですから、早急に出来る対策として毎日の水の放射線量の調査や、例年よりも高い頻度での水の入れ替え、また、例えばプールを利用していない時間帯はシートでプール全面を覆い、放射性物質を含む雨や埃をできるだけ水に入り込ませないようにする等の対策は直ぐにでも出来るのではないかとお伺いしました。

前述した年間1ミリシーベルトという基準の上に、放射線管理区域の設定基準があります。文科省自身が定めたもので(子どもの年間20ミリシーベルトも今回文科省が定めた基準ですから、完全なダブルスタンダードであり自己矛盾ですが)、外部放射線に係る線量について、実効線量が3か月あたり1.3ミリシーベルト(およそ毎時0.6マイクロシーベルト)を超えるおそれのある場所については放射線管理区域に設定しなければならないとしています。

放射線管理区域とは、放射線による障害を防止するために厳重に管理されるべき区域で、法令により取り決められており、以下の処置を講じなければならないこととされています。また、管理区域内に立入る者に対しては、放射線防護の観点から、定期的な健康診断、教育・訓練等が義務づけられています。もちろん子どもの立ち入りは許されません。

1)関係者以外の立入りを禁止し放射線被曝を防止する
2)放射線モニタリング等を厳重に行い、被曝防護対策を行う
3)管理区域外への放射線の漏洩、放射能汚染の拡大を防止する
4)標識・柵等によって境界を明示・区画し、出入り管理を行う
5)被曝管理を行う

栃木県の測定によると(大田原市は独自の調査は行っていません)、大田原市内の全ての教育機関では前述の年間1ミリシーベルトの基準を超えていますし、そのうちのいくつかの教育機関は放射線管理区域です。

年間20ミリシーベルトという基準を下回っているからといって、安全だから何もしないで済まされるのでしょうか。出来る限りの対策を講じて、もともとの安心できる基準である年間1ミリシーベルトに近づけるよう努力すべきではないでしょうか。

大田原市では専門家の意見を参考にしながら今後も対応対策をとるかどうか検討していくとのことでしたが、安全か危険かといった基準に関しては、専門家の意見ですら分かれているというのが現状です。
既に年間1ミリシーベルトという、事故以前は日本も批准していた世界基準があるのですから、今さらどこまでが安全かという意見を専門家に聞く必要があるのでしょうか。

大田原市は、年間1ミリシーベルトという基準を上回るどころか、場所によっては放射線管理区域として設定されるべき基準(3か月あたり1.3ミリシーベルト、およそ毎時0.6マイクロシーベルト)を超えるところもあります。
専門家の意見を聞くのであれば、「当然大田原市として独自の放射線量測定や除染等の対応対策は行う」とした上で、正しい測定や有効な除染等の方法のアドバイスを受けるべきだと考えます。

しかし、少なくとも今後も検討していくという言葉が出てきたということは、まだ方向転換をする余地は残していただけたのかなと思っています。

新江侃教育長は、子どもの健全な育成と教育に人生を捧げて来られたはずです。
私は新江教育長のことを信じています。
ご自身が歩んでいらした教育者の道を今一度振り返ってみてください。
子どもたちの笑顔を思い出してください。

また、津久井富雄市長は、就任の際に第一番目に掲げるマニフェストとして、
「まず、1点目でありますが、市の未来を担う子育ての支援でございます。子どもを健やかに生み育てる環境づくりの施策を総合的に推進してまいります。」と市民に約束し、強い信念のもとに市政を司っておられます。
私は津久井市長のことを信じています。
市長に就任した際のマニフェストをもう一度思い出してください。
私は大田原市が大好きです。
その大好きな大田原市のために、微力ながら役に立てることがあるのではないかと市議会議員をつとめさせていただいております。
大田原市民の期待を一身に背負い市長になられた津久井市長が市民を思う気持ちは、私よりもっともっと大きく深いはずです。

私は、市政の批判をするためだけという非生産的な理由で今回の質問をしたわけではありません。
また、荒唐無稽で非現実的な対応対策はお願いしていません。
現実的に市として実行可能だと思われる対応対策をお願いしています。

市が動かないのなら、各教育機関の校長先生園長先生はじめ、先生方が声をあげて行動してください。
そして、市の各部課長始め職員が声をあげて行動してください。
「市の方針なので」では済まされません。
動かないなら動かないなりに、公務員としての自分の行動指針として責任をとる覚悟を持ってください。

今回の議会は残念な結果でしたが、今後できるだけ早い段階で市の方針を「出来る限り子どもを被曝から守る」という方向に切り替えていただけることを信じて私はこれからも行動していきます。

また、大田原市民の、特に子どもをもつお父さん・お母さんたちの声が大きくなれば、行政も動かざるを得なくなるはずです。みなさまの力を私にかしていただけることを切に願います。

大切な子どもたちの未来のために。


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八木 ひでこ
大田原市議会議員
八木 英子(やぎ ひでこ)

栃木県大田原市本町2-2829-35
hideko@yze.jp